特集1 看護と死
―「看護と死」をめぐる私の体験―ナースが支えられることの意味
𠮷田 みつ子
1
1日本赤十字看護大学基礎看護学
pp.35-39
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100181
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とにかく逃げ出したかった
患者の死が怖かった――。
12年前の自分について思い起こし,表現するきっかけを与えてくれたのが,小宮先生から送られてきた井上さんのメールでした。率直に自分の感情を語る井上さんの文章を読み,これまでほとんど人に話したことのない過去の記憶が一気に蘇り,私も話したい,誰かに聞いてもらいたいという強い気持ちが沸き起こりました。
私は幼い頃に大病をしたせいか,死への恐怖心の強い子どもでした。ナースになりたいという希望を強く意識することもなく,いくつかの学部を比べながら,当時珍しかった看護大学に進学しました。4年間の実習では受け持ち患者の死に出会うことはありませんでしたが,病棟のなかで誰かの死が差し迫っていることを示すさまざまな機器の音や重苦しい空気が嫌でした。しかし,そのことについて誰かと話をする機会もありませんでしたし,そのような感情について深く考えることもなく卒業を迎えました。
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