特集1 看護と死
―「看護と死」をめぐる私の体験―怖いことは怖いと感じてもいい
宍戸 亜紀子
1
1東京大学医学部附属病院
pp.25-26
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100178
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死に逝く患者を受け持って
こんにちは。往復メール,読みました。
私は,学生時代にいろいろ実習をしましたが,一番難しかったのは1年生のときの基礎看護実習でした。私が受け持った患者さんは,ちょうど親と同じくらいの年齢の,末期の卵巣がんの女性の方でした。日常生活行動は自立していたので,私がするその患者さんのケアは話をすることでした。
当時は,私にとって死は身近なことではなく,死ぬことを異常なほど怖れていました。末期状態の方を見るのは初めてでした。もっと意識がない状態なのかと思っていましたが,思ったより意識はしっかりしていました。しかし,私は患者さんにどう接したらよいのかわかりませんでした。予後は知らせていませんでしたが,その患者さんは自分が悪性であることを知っていて,予後も悟っているように見えました。夫や子どもの今後を心配したり,「このまま,死んでしまうのではないかと心配なんですよね」などと言います。さらに,その方の蒼白な顔面と,肘関節が異様に目立つほど痩せ細った腕が,死が近づいているのを感じさせるのでした。私は,ジワジワと死が近づいている感じが怖かったのです。
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