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●看護の診療報酬は「イケイケ」か
先日ある医学系の研究会議で、研究者それぞれの臨床領域での診療報酬項目の新設や加算、減算が話題になった。例えば、整形外科の領域では柔道整体や接骨などが競争相手になる。整形外科領域の予防活動はそれら代替療法に比べて評価が高いかどうか、予防の効果をどう見るのかなどが問題になっているとのことだった。熟練した接骨医と熟練しない整形外科医の腕はどちらが確かか、糖尿病予防や介護予防といった巨大な対象者をもつ予防活動に、どの資格のどの団体がイニシアチブをとるのだろうかといった話題もあった。
そのとき、その席にいた人々が口をそろえて、「看護は今イケイケでしょう。加算が通るのは看護でしょう」というのである。筆者は、同席されていた看護の大御所とともに思わず「ええーっ、それはどうしてでしょうか」と聞き返してしまった。1つ1つの看護行為の専門性や、それが標準化されていて一定の効果を保証できるというデータを、看護系の学会や職能団体からどう出せるのか、が最大のテーマであり、医系の学会はすでにそうした活動を専門に行なう部署を備えていると聞いている我々としては、探りを入れられているのであろうそうした発言に対して、あまりみっともないリアクションをしてはいけないと思うのであるが、それにしても「イケイケ」という単語と現状の激しいギャップに、聞き返さずにはいられなかったのである。
そもそも看護ケアは、医師のように1回の診察や専門療法、手技に対して診療報酬が支払われるのではない。このことが訪問看護ステーションの経営や看護師の開業にどれほど影響を与えていることか。しかも、心理社会的なケアについては標準化やエビデンスを出す作業は困難を極め、客観的に形にすることを求められる官僚への説明は、筆者が作業中に円形脱毛症を発症するほどだったのである。ちなみに、筆者らへの反応に対してその場の人々は、「いやー、看護は何事につけてもイケイケだから、そう思って……」というなんだかよくわからないものだった。
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