連載 精神看護キーワード事典・6
個人情報保護法とガイドライン
萱間 真美
1
Mami Kayama
1
1聖路加看護大学・精神看護学
pp.81-87
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100084
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●医療記録は誰のものか
カルテ開示やインフォームドコンセントの議論がされるとき、必ず問われるのは、医療記録は誰のものかという問題だった。長い間、医療記録は患者に最善の医療を提供するための手段として医療スタッフが用いる道具であり、また手段の1つであるという考え方が主流であったように思う。
スタッフが最小限の時間で記録し、そして短時間で理解して行動に移るために、医療記録には専門用語や略語が多用された。看護教育の中では、どの情報からどのように判断して行動したのかを記録に残す訓練が重要であるとされ、判断を明確に記録に残すにはどうすればよいかが検討されてきた。これらのすべては、医療記録を医療者の立場から改善し、使いこなそうとする努力であったと思われる。
しかし、『個人情報保護法』と医療・介護の領域での具体的な法律の運用を定めた『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン』では、医療記録は明確に「患者の個人情報である」とされている。
この、あっけないともいえる視点の大きな切り替えが、今回のガイドラインの最大の特徴である。それは開示するかしないかを選べるものではもはやなく、もともと患者自身に属するものなのだから、医療機関はその保護に努め、さらに誰かに提供するときには持ち主である患者の同意を得ることが求められる。医療記録は、それが何のために、どのように用いられるかではなく、「患者を特定できる情報」として患者自身のコントロール下におかれるのだ。
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