連載 精神看護キーワード事典・16
バーカー先生とタイダルモデル
萱間 真美
1
Mami Kayama
1
1聖路加看護大学
pp.94-97
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100323
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●出会い
あれは10年前。スコットランドに程近い、イングランドの北部の都市ニューカッスルで、バーカー先生と初めて待ち合わせをした。なぜかわからないのだが、草原のなかで。8月の半ばといっても、かの地ではもう秋の気配が漂い、ひんやりした風が吹いていた。ベンチに座っていると、黒いスタンドカラーの上下を着た、口ひげに銀髪の背の高い男性が歩いてきた。よく見ると銀髪は後ろで長く三つ編みに垂らしてあった。靴だけが鮮やかな赤であった。さらによく見ると、靴下は七色のストライプだった。それがバーカー教授で、背筋をぴしっと伸ばし、美しい英語で挨拶をされた。英国でProfessor(教授)といえば社会的地位はとても高い。また、外見もとても威厳のある方なので、私はたちまち緊張した。しかし、靴下を見てしまったのでその不思議さにも気をとられてしまい、とんちんかんなご挨拶をしたことを記憶している。
●イギリスのプロフェッサーは偉い
先生はニューカッスル大学の精神医学講座に所属されていた。看護学部ではなく医学部の臨床系講座で、教授のポストをもち、現任の看護師たちを学士課程や修士課程に迎えてトレーニングし、ご自分自身も行動療法の専門家としてうつの治療にあたっておられた。臨床家で理論家でもあり、英国の行動療法学会の理事長も務められていた。まさに大御所であった。
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