特集 認知症当事者のニーズから始める
認知症の人のニーズをいかに聴くか
繁田 雅弘
1
1首都大学東京人間健康科学研究科
pp.260-263
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200422
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自分たちで決める環境をつくっていけるか
筆者の専門は老年精神医学という精神医学の一領域である。中高年の精神障害を専門とする関係で、担当する人は高齢者や認知症の人が多い。そうした診療のなか、治療や介護保険の説明になると、本人や家族から「先生はどれがよいと思いますか」「どうしたらいいですか」と言われてしまう。「治療薬の違いはどこにあるのですか」「副作用に違いがありますか」「どのリハビリが合っていますか」などと尋ねてくれれば相談のしようもあるが、「先生が決めてください」と言われてしまうこともある。
こうしたことから、「どうせ患者や家族は、自分で決められないのだから専門家が決めるべき」と主張する人がいる。「所詮、インフォームド・チョイスなどと言っても、結局は患者と家族は専門の知識がないのだから、説明や話し合いを行なってもそれは形式的なもので、患者と家族の満足以上のものはない」、そう言う人もいる(もちろん家族の納得のためだけでも説明と話し合いを尽くす意義はあると考えられるが)。
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