連載 専門看護師の臨床推論+・16
掘り下げて聴くことで見えてくる女性のニーズと看護
瀧 真弓
1
,
大生 定義
2
,
井部 俊子
3
1都立大塚病院
2立教大学
3聖路加看護大学
pp.408-413
発行日 2013年5月10日
Published Date 2013/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102771
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ドメスティック・バイオレンス(以下,DV)は,女性と子どもの健康に深刻な影響を及ぼす人権侵害である社会問題として認識されるようになった。日本では,女性の4人に1人が配偶者から被害を受け,そのうち10人に1人は何度も受けたことがあり,20人に1人は「命の危険」を感じる暴力を受けたことがあると報告されている1)。
周産期のDVは,妊婦の約5%にみられ,低出生体重児や胎児機能不全*など胎児の健康へも影響するリスクや,子どもの虐待との関係も指摘されている。妊娠がDVのきっかけとなったり,妊娠してから暴力の程度が悪化することも危惧されている。妊娠中,および子どもをかかえている産後・育児という周産期にある女性は,特に支援の必要性が高い。妊娠中は定期的に医療機関を受診するため,医療者をはじめ,支援者と接する機会が増え,潜在化している被害者の発見と支援の提供の好機になる2)。
しかし,医療者はその問題とケアについて情報や知識をもたないと,DV被害者である女性に対して,医療者からのこころない言葉や態度で,さらにDV被害者へ二次被害をもたらすケースもある。そこで,医療の現場で看護師に求められるDVの知識とDV被害者支援の実際を報告する。
*「胎児機能不全」の定義……胎児機能不全とは,妊娠中あるいは分娩中に胎児の状態を評価する臨床検査において,「正常ではない所見」が存在し,胎児の健康に問題がある,あるいは将来問題が生じるかもしれないと判断された場合をいう(日本産科婦人科学会,2006年).
Non-reassuring fetal status(NRFS)の概念にほぼ一致する用語。
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