書評
『進め方と方法がはっきりわかる 看護のための認知行動療法』
矢内 里英
1
1埼玉県立精神医療センター
pp.538
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102228
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看護師として働き出して数年目の頃、傾聴や共感を主たる技とする自分の看護に疑問を感じていた。たとえば、眠れなくてつらいと訴える患者さんに対し、その話を傾聴し自分なりに共感し、何かしらのアドバイスをしようと試みる……。しかし患者さんは、「聴いてくれてありがとう」とは言うものの、結局眠れないことに変わりはなく、頓服薬に頼らざるを得なくなる、というパターンが多かった。
もちろん、対処方法のレパートリーに服薬という選択肢を加えられるよう、患者さんをサポートすることも立派な看護である。しかしながら当時は、患者さんの対処能力を高めるというよりも、なんとかその場を切り抜ける手段として薬に頼っていたような気がする。また、看護の技として患者さんに治療的な介入ができていない自分にも不全感を感じていた。
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