特別記事
刑法の「一部露出」説から見た出産現場にかかわる医療者の責任
大山 由紀
1
1広島大学大学院医学系研究科保健学博士課程前期
pp.825-829
発行日 2000年10月10日
Published Date 2000/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902016
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はじめに
胎児の身体の一部が母体外に出ること,これは出産場面では排臨ということになり,産婦や出産を手助けする者には,あと一息という喜びや安堵が与えられる通過点である。
この「胎児の身体の一部が母体外に出ること」を刑法では「一部露出」と呼び,現在では「人の始期」を示す通説となっている。身体の一部が母体外に出るまで,言い換えると,母体で包まれている胎児は,「人」としては認められないので,危害が加えられても,刑法の殺人罪や傷害罪は適用されないのである。
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