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研究と報告
精神病理学と刑法学の境界領域—酩酊責任を中心として
Beiträge zum Grenzgebiet zwischen Psychopathologie und Strafrechtswissenschaft: mit besonderer Berücksichtigung der Zurechnungsfähigkeit des Alkoholrausches
斎藤 義寛
1
Y. Saito
1
1市立室蘭総合病院祝津分院
1Städtisches Krankenhaus zu Muroran. Abteilung der Neuropsychiatrie
pp.989-993
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200927
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I.まえがき
責任能力とは法律上の概念であるが,精神鑑定に関与するものであるので,法律家と精神医学者が互いに協力して研究しなければならない問題である。このことではすべての人々の意見は一致しているのに,わが国ではその両者の意見が交換される機会は少ないようである。しかし私は精神病理学と刑法学は,一見まつたく異なつた領域のように見えるけれども,さまざまな面で類似点をもつているので,双方の学者が共通の論議の場をもつときは,非常に理解しあえる点が多いように思うのである。法律家も精神医学者も互いに他の領域を知るべきであり,そこに新しい進歩や発展がもたらされるものと考える。
けれども私がこのような立場に立つときは,責任能力の概念の吟味,現行法や精神鑑定のありかたの批判という,きわめて重大な問題に立入ることになる。そしてそれには精神病理学と刑法学という,二つの膨大な領域に対する深い造詣を必要とする。これは私のような若輩のおよぶべきものではないかもしれない。しかしそれにもかかわらずこの論文を書いたのは,このような論議が活発になるための,一つの問題を提起したいと考えたからである。この論文には種々の欠陥が指摘されるかもしれないが,それを指摘されないままに放置されると,私は今後も自信のないままに,いつまでも欠陥の多い鑑定書を書きつづけることになる。これは私の鑑定人としての良心にとつても,堪えられない問題なのである。
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