焦点 感情労働と看護
コラム 「感情労働と看護」に触発されて
西村 ユミ
1
1日本赤十字看護大学
pp.895
発行日 2001年11月10日
Published Date 2001/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901334
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「感情と看護」(医学書院),『感情労働としての看護』(ゆみる出版)を読んでから,しばらく間が空いてしまった。が,ページをめくりながら受けた印象はよく覚えている。これらの本には,私がよく出くわす経験がたくさん綴られており,読みながら「ああ,あの経験はそういうことだったのか」「私だけじゃなかったんだ」と,ついつい独り言を口にしてしまいそうになる。しかし,改めて「感情労働とは」と自問すると,言葉に詰まる。私が,感情労働という概念自体をしっかり理解していないためかもしれない……。そんな想いに駆られ,この講座に参加してみた。文字ではなくて,生の声で語られる感情労働に触れながら考えることで,何か腑に落ちるものが得られるのではないか,と思ったからだ。
最初のシンポジストであった広瀬氏はとても細い声で,「仕事をしてきた中で一番きつかった」経験を語ってくれた。私はついついこの話に飲み込まれ,「語りながらもう一度傷ついた」と広瀬氏が語った時,私も一緒に痛みを感じていた。同時にその瞬間,広瀬氏の,傷つきつつもわき上がってくるさまざまな感情を押し殺し,息を引き取る患者さんの前で茫然と立ちつくしている姿を見たような気がした。
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