連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・10
感情労働としての看護
武井 麻子
1
1日本赤十字看護大学
pp.58-61
発行日 1995年1月1日
Published Date 1995/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904724
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はじめに
最近,Nursing Research誌に掲載された比較的小さな論文のなかにCompassion Fatigueという言葉を見つけ,興味を持った(Pickett et al.1994).「同感疲労」あるいは「思い入れ疲れ」とでも訳すのだろうか.
看護研究は,病や死に直面して苦しみ,癒えない障害に悩む患者や家旅,大事な対象を失ってしまった人々など,苦痛に満ちた感情体験をしている人々を対象とすることが多い.そうした人々と対面し,その事情や気持ちについて聞くことは,客観的であるべき研究者にとっても辛く,苦しいものとなる.いや,その辛さや苦しさが分からないような研究者の研究は,読むに値しないといってよいのかもしれない.ところが,研究論文として表に出る部分では,調査の過程での研究者の感情体験は消し去られている.その感情の動きはよくいえば昇華,悪くいえば抑圧されるのである.
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