焦点 感情労働と看護
感情労働とは何か
石川 准
1
1静岡県立大学国際関係学部
pp.881-886
発行日 2001年11月10日
Published Date 2001/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901332
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はじめに
ここでは,今回のテーマである「感情労働」について,社会学ではどのように考えているのかをできるだけわかりやすく説明したいと思います。
その前に,心理学では感情をどのようなものとして捉えているかをまずお話しします。心理学では,感情は環境の変化をすばやく認知してすかさず反応するための仕組み,つまりセンサーと行動のトリガーと考えられていました。たとえば,危険を認知すると「怖い」という感情が引き起こされ,それが引き金になって「逃げ出す」という行為が起きるというわけです。このため,心理学によれば,単純な環境においては,感情は大変機能的な仕組みだけれども,複雑な状況ではもっと冷静に,合理的に判断してどうすべきかを決めて選択していくほうが個体の生存にとって都合がいいのではないか,と言われたりしているのです。これは,複雑な現代社会においては,感情は不要なものだとか,非合理的なものだというふうな口ぶりにも聞こえます。
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