焦点 現象学的研究における「方法」を問う
潜在的な視線触発と純粋な超越論的テレパシー―初期西村ユミのポテンシャル
村上 靖彦
1
1大阪大学大学院人間科学研究科基礎人間科学講座
キーワード:
西村ユミ
,
メルロ=ポンティ
,
視線触発
,
超越論的テレパシー
Keyword:
西村ユミ
,
メルロ=ポンティ
,
視線触発
,
超越論的テレパシー
pp.76-84
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100493
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現象学にとっての看護研究の位置
現象学には経験される現象を分析するという機能がある。しかし経験の領域はフッサールが主に取り上げた「認識」に限られるわけではない。例えば認識の裏面,言い換えると複雑な社会環境による触発(これを現実触発と呼ぶことにする)に対する応対の研究を構想できる。この応対には2つの種類がある。1つは身体に書き込まれた象徴構造を現実に適応できるよう組み換える場合。この場合,現実をいかに受容するかが問題になるので治癒や成長が主題となる。心理臨床や精神病理学を現象学へと読み替える作業はこちらの側のプログラムである。もう1つは,社会環境の側で諸象徴構造間の調和を探し出す場合。この場合,環境へと介入する行為が問題となるので行為論となる。看護研究はこちらに属する。
現象学が精神医学や看護研究に踏み込む理論上の理由は,触発の次元へと拡張するためである。一般的には,本論でその一例を示すように新たな現象を発見してゆくための重要な手がかりとして重要性をもつのである。
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