連載 環境?!・12
人の動作に対応したしつらえ
筧 淳夫
1
1国立医療・病院管理研究所 施設環境評価研究室
pp.909
発行日 1999年12月10日
Published Date 1999/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900939
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椅子から立ち上がるときの動作を考えてみよう.いくつもの動作を連続的に行なうこととなるが,まず,くるぶしの位置は膝よりも後ろになければならないことに気づく.たとえば足を前に投げ出した状態では,絶対に立ち上がることができない.次に,立ち上がるときには頭を前に出して,少し前かがみの状態になって,お尻を浮かせてから立ち上がるのが普通の動きである.これは,座っている人の額を,人差し指1本で抑えただけで立ち上がれなくなることでわかる.このような一連の動作と家具や建築上のしつらえは,うまく対応しているのだろうか.
洋式便器から立ち上がる動作も同じ原理で行なわれる.写真の便所は,特別養護老人ホームで2つの個室の問に設けられた共用の便所である.両側の個室から利用できる位置にあり,室内側から車椅子で接近すると,身体を回転させることなく,便器に乗り移ることができるようになっている.また,手すりの位置は前かがみになったときにつかむことができるように,かなり低い位置に設けられており,立ち上がり動作と関連づけられていることがわかる.
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