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はじめに
日本看護協会では2014年度から重点事業として「看護師のクリニカルラダー」の標準化を目指し,2016年に「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」を公表した1)。これは2025年問題への対応として,あらゆる場における全ての看護師に共通する看護実践能力の指標として,看護師の質の向上に活用されている。しかしまだ,助産師のクリニカルラダー(CLoCMip)のような認証制度にまでは確立されておらず,施設を超えてラダーを客観的にどう測定していくのかということについては具体的な方策が示されていないのが現状である。
クリニカルラダーは,卓越した業績を生む人材の持つ行動特性を指すコンピテンシーと共に捉えられることが多い。ベナーは看護師が看護ケアを修得し,熟練するには「初心者レベル(novice)」「新人レベル(advanced beginner)」「一人前レベル(competent)」「中堅レベル(proficient)」「達人レベル(expert)」の5段階を経るとしている2)。多くの病院ではこのベナーの5段階のレベルを基に院内認定資格として,「クリニカルラダー」を設定している場合が多い。
京都大学医学部附属病院(以下,京大病院)ではベナーの理論を参考にして18項目で構成される3つの評価票を作成し,項目の達成度に応じて初心者レベルから達人レベルまでを評価している。「一人前レベル」であるラダーⅢに到達するまでには,評価が繰り返し行われることから,この仕組みの課題として,①面接に時間を要することで評価者と被評価者の負担が大きいこと,②被評価者が受け身になりがちなこと,などが挙げられていた。
そこで,クリニカルラダー評価の際に活用できる補助的なツールとして「臨床実践能力判定テスト」を開発しようと,看護管理者と研究者が協働して取り組むこととなった。この取り組みは基礎研究で得られた知見を臨床場面で実用できる手法として確立するための橋渡し研究,いわゆる「トランスレーショナルリサーチ」の実践でもあった。
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