5．整形外科領域におけるトランスレーショナルリサーチ

Translational research for the development of innovative orthopedic products

は じ め に

　大学などの研究機関の優秀な研究成果を実用化に結びつけて社会に還元していくことは，国，大学，あるいは医療産業界が担う重要な使命であるが，医薬品や医療機器の開発は，莫大な資金や労力，そして開発期間を要し，決して容易なことではない．国際的にも，わが国のライフサイエンス産業は，優位であるとはいえない状況になってきており，その原因としてアカデミアの基礎研究を企業による臨床開発へつなぐための橋渡し研究（トランスレーショナルリサーチ）や，ベンチャー企業による開発の仕組みの定着の遅れ，早期臨床開発（第Ⅰ，Ⅱa相治験など）の未熟さ，高い開発費用（治験費用）などが指摘されていた．

　このような問題点を克服するため，2003年から厚生労働省と文部科学省が共同で治験の活性化を，2007年からは文部科学省がいわゆる橋渡し研究の拠点形成を中心に^1），大学などにおける新規医療技術の実用化のためのリソースの充実による拠点形成と，そのネットワーク形成を推進する事業を展開し，その成果が着実に実を結び始め，多くの製品が上市にいたっている．