今月の臨床 ここまできた分子標的治療
分子標的治療とトランスレーショナルリサーチ
坂本 優
1,2
,
岡本 三四郎
1,2
,
三宅 清彦
1
,
小屋松 安子
1
,
秋谷 司
1
,
中野 真
1,2
,
天神 美夫
1
,
田中 忠夫
2
1佐々木研究所附属杏雲堂病院婦人科
2東京慈恵会医科大学産婦人科
pp.1240-1251
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101581
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はじめに
基礎研究で得られた成果を臨床に応用する際の橋渡し研究が,探索的臨床研究(トランスレーショナルリサーチ)である.一方,分子標的治療の開発と臨床応用には,以下の一連のステップが必要である.すなわち,がんの増殖,血管新生,転移などにかかわる重要な分子を発見し,それらの分子標的に特異的な抗体や低分子化合物を作成し,まず基礎的に腫瘍細胞のみの増殖を抑制し,正常細胞に悪影響を与えないかどうか,抗腫瘍効果,血管新生抑制作用,転移抑制効果などの前臨床試験で十分に検討したのちに,分子標的薬の有効性と副作用を検討するための製薬メーカー主導,場合により医師主導の第I/II相臨床試験を行う.最終的には,製薬メーカーが医薬品としての承認を申請することになる.
トランスレーショナルリサーチは,分子生物学の基礎研究成果を治療に応用(translate)するための研究であり,研究のステージの視点からは純粋の基礎研究は含まれず,ヒトへの応用を意図した段階からの研究と考えられる.したがって,そこには前臨床研究と臨床研究が含まれる.
このように,分子標的薬が医薬品として承認されるためのステップとして,トランスレーショナルリサーチは非常に重要な意義があり,政府もトランスレーショナルリサーチの推進に力を入れている. 本稿では,分子標的治療の概要,抗がん剤との比較,分子標的薬の分類,現在使われている分子標的治療薬,トランスレーショナルリサーチの進め方,現在進行中の臨床試験などについて述べる.
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