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■医薬品開発の動向
2004年に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)は“Challenge and Opportunity on the Critical Path to New Medical Products”を発出した.この中で,図1に示すように医薬品開発への投資額は製薬企業および政府の開発機関である米国立衛生研究所(National Institute of Health;NIH)ともに年々増加しているにもかかわらず,図2に示すようにFDAで承認申請が受理される(承認ではない)数が医薬品・生物製剤ともに減少していた.先の白書はこれに対して非常な危機感を示し,規制当局の側から開発を促進する対応策を打ち出していく意図が込められていた.
一方,このころより,製薬業界では「2010年問題」への対応が大きな問題となっていた.これは,売り上げの上位に位置する医薬品の多くが特許切れを迎えるが,それにとって代わる大型の新薬開発が進んでいないため,経営上大きな危機を迎えるというものであった.表1は2002年と2012年の医薬品の世界売り上げトップ10を示したものである.2002年は,2位に赤血球造血刺激因子でバイオ製剤であるエリスロポエチン製剤が入っているが,その他は化合物の薬物作用を探求するスクリーニング等により開発された医薬品であった.また,その多くは「2010年問題」に含まれる特許切れを迎えていた.2012年になるとトップ10の医薬品は全て入れ替わっているが,特に注目する点として,6品目が特定の作用機序に関与する分子をターゲットとした分子標的療法薬であり,そのうち5品目が抗体であったことが挙げられる.ヒュミラⓇとレミケードⓇの作用機序は関節リウマチ等の原因であるTNFαの過剰生産に対して抗体でTNFαを阻害することであり,エンブレルⓇはTNFが結合する受容体とヒト免疫グロブリンのFc部分から構成されており,TNFが細胞表面の受容体と結合することを阻害する.リツキサンⓇはB細胞性リンパ腫ではリンパ腫細胞表面にCD20が発現していること,ハーセプチンⓇは乳がん等でHER2が過剰発現している場合が多いことに注目し,悪性細胞で発現している分子に抗体が結合し障害を与えることが作用機序である.固形がんでは血管新生による腫瘍の増殖が認められるが,アバスチンⓇは血管新生を促進する分子であるVEGFの作用を阻止する抗体として開発された.いずれも基礎研究での発見に注目し,医薬品として抗体あるいは受容体製剤として開発されている.
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