特集 ちょっと気楽に! みんなで支える臨床看護研究
[コラム]看護研究への病棟医師の協力―質的研究編
伊藤 惠子
1
1東京都保健医療公社豊島病院 緩和ケア科
pp.796
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102167
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医療現場で「援助職」という認識が最も希薄なのが医師,その医師への援助をする人の代表が看護師という見方もあるかもしれない。利用者支援という枠から離れた役どころで,労多く益少なし,近くから見ていて心苦しく思う。医療が医学を基盤として成立すると信じている医師からすれば,医療現場は科学的エビデンスにのっとり,理路整然と対処される場というイメージがある。援助職の視点からみれば,現場は理論どころか推察すらおぼつかないことだらけで,日々さまざまな現実が進展,反復されていく。混沌とした事実を前に,何かしら人々の行動や認識のなかに分け入ることができないかと模索するなかで,最近医療領域でも注目を集めているのが質的研究である。現場の奥深さを照らす一本のたいまつのようなものである。
私は1980年代,健康調査の一環で関わった地域での分析に質的アプローチを用いた。当時はまだ公衆衛生領域の研究スタイルとしては途上中で,論文としてまとめるには難題山積であった。恩師の叱咤激励を頭から浴びながら何とか完成にこぎつけた。
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