巻頭
研究の協力と綜合
杉 靖三郞
pp.280
発行日 1950年6月15日
Published Date 1950/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905511
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最近の科学的研究の特長は,その発展が孤立した学者によつておこなわれるのではなく,多くの人々の組織的な協力と,科学各分野の成果の綜合によつて推進せられていることである.それは湯川博士の中間子理論の発展が,"素粒子グループ"とよばれる有能な若い物理学者らの力づよい協力によつてなされていることから見ても,自明のことであろう.
ひるがえつて医学のような具体的な対象をもつものにあつては,医学各分野の協力はもちろん,他の諸科学分野の協力ないしは綜合なくしては,眞の進展はもたらせないのである.このことは,戰前におけるドイツのKaiser Wilhelm Instituteの設立によつて,医学研究の—大進展がもたらされたことや,戰時中にサルファ剤,ペニシリン,DDTなどの研究に長足の進歩がもたらされたことや,さらに戰後のアメリカ医学が,数多くの抗菌剤の発見に,ウィールスの探究に,また癌の研究その他にめざましい進展をとげつゝあることは,ひとえに協力と綜合との美事な成果であり,訓練を積んだ一連の医師たちの緊密な共同作業のたまものなのである.
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