連載 病院のことばとコミュニケーション――ポライトネス・ストラテジーの視点から・5
医療コミュニケーションと方言―患者さんと方言で話すとどんな効果があるのでしょうか?
吉岡 泰夫
1
,
有満 憲恵
2
1別府大学大学院文学研究科・日本語センター
2済生会熊本病院
pp.366-370
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101464
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ポライトネスの効果的な表現手段としての方言
今回は,患者・家族と医療者が円滑なコミュニケーションを図って,情報を共有し,医療チームとして信頼関係・協力関係を築くために,方言を活用することがどのように役立つか考えていきましょう。
方言はポライトネスの効果的な表現手段です。お互いの心理的距離を縮める「親近方略」(ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー)のなかに「仲間内アイデンティティ・マーカーを使う」という方略があります。方言は同じ地域の仲間内であることを確認する指標だから,患者さんが方言を使うことを容認し,患者さんが使う方言を理解しようと努力して,お互いの心理的距離を縮めようとする歩み寄りは,医療チームの信頼関係・協力関係の構築に役立ちます。また,「患者さんに関心をもって医療情報を収集する」「同意点を探る」という方略に関しても,方言を活用することが医療チームの情報共有に役立ちます。
ポライトネスの観点から,医療面接での方言の効用について,医師と患者さん双方を対象に調査を実施しました。調査結果を踏まえて,ポライトネス・ストラテジーとしての方言の効用について考察していきます。
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