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はじめに
急速な少子高齢社会を迎えたわが国では,さまざまな保健医療の問題を抱えている。無医地区などの医療の地域格差や,医療従事者の不足は慢性的となっている。一方,医療の高度化,専門化が進むなか,多くの医師は雑多な仕事に追われ,各自の専門分野の医療・医業に割ける時間的余裕が少なくなっており,労働環境は悪化の一途をたどっている。看護職に対する高等教育が加速しているなかで,医療従事者間の役割分担の必要性が行政からも発信されている。ナースプラクティショナー(以下,NP)の養成は,わが国の保健医療の課題を解決する方策の一つではないかと考えている。
NPは40年以上も前にアメリカで誕生した職種で,多くのNPが保健医療分野で活躍し高い評価を受けている。NPとは看護モデルと医学モデルを用いて,患者・家族などにプライマリケアを提供する専門職であり,ナースとプラクティショナーの両方の機能を併せもつ職種である。韓国では,1980年代初期に保健診療員(community health practitioner;CHP)制度ができ,農村,漁村,無医村を中心にプライマリヘルスケアの第一線で活動を開始した。その後,2000年代にNP制度が導入された。
大分県立看護科学大学は2005(平成17)年よりNPプロジェクトを立ち上げ,教員が順次NPが活躍するアメリカと韓国に研修に行き,活動状況などを視察してきた。その学びや情報をもとに検討・準備を重ね,看護系大学院修士課程の教育の目標の明確化および看護職のさらなる自律を目指して,2008(平成20)年4月より大学院修士課程でNPの教育を開始した。本稿では,韓国のCHPとNPの活動などについて,インタビューなどを通して学んだことに焦点を当て報告する。
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