特集 自治体病院をめぐる課題と活性化への道
公設民営病院が担う役割と看護管理の工夫
鈴木 まち子
1,2
1川崎市立多摩病院
2川崎市立多摩病院看護部
pp.1011-1015
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101349
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はじめに
東京都心と隣接している川崎市の北部地域では,それまであった400床規模の救急告示病院が2006(平成18)年に廃院することになり,中核機能を果たす救急告示病院のない地域となるおそれがあった。その地域の医療体制の充実を図るために,川崎市は新たな市立病院の開設を決め,市議会は学校法人聖マリアンナ医科大学(以下,法人)を指定管理者に議決した。
こうして川崎市立多摩病院(以下,当院)は,救急災害医療と小児救急を中心とした,市内で3番目の市立病院として2006(平成18)年2月に開院した。2006年には診療報酬の改定があり,患者自己負担の増額や,7対1入院基本料の新設による看護師の争奪戦が始まるなど,医療環境の厳しい中での開院であった。その頃は「医療崩壊」という言葉をしばしば耳にしたが,「崩壊した後は再生されるはずである」と希望をもちつつ今に至っている。
一方で昨今,多くの自治体病院は従来の医療提供体制を維持することが厳しい状況となり,経営危機が問題視されている。2007(平成19)年末に総務省から,公立病院が果たす役割と運営について検討した「公立病院改革ガイドライン」が打ち出された。それには,(1)経営の効率化,(2)再編・ネットワーク化,(3)経営形態の見直しの3つの視点が述べられている。
そのような社会情勢や医療経営環境の厳しい時期に,当院の公設民営病院の試みが始まったといえる。今回は,私立医科大学が運営している公立病院である当院の担う役割と現場の工夫,今後の課題について述べることにする。
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