特集 医療における民間活力の導入
米国の医療における民営化の動向
山本 功
1
Isao YAMAMOTO
1
1株式会社野村総合研究所投資調査部
pp.1020-1022
発行日 1986年12月1日
Published Date 1986/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208959
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病院経営会社の台頭
1950年代の終わりごろ,トーマス・フリスト・シニアというケンタッキー州ナッシュビルに住む医師は,同地の病院施設の貧しさを解消するために,自ら病院の建設を始めようとした.しかし,必要と思われる機器・設備が整った病院を建設するための資金が不足していた.そこで,彼と彼の協力者たちは,その病院を株式会社として,株式の発行により,資金調達を行ったのである.
1965年に議会を通過したメディケア(老人医療保障)とメディケイド(貧困者医療保障)の二つの制度は,フリストらの病院経営会社の株式の魅力を高める結果となった.医療ニーズは常に安定的に存在するのに加えて,政府がその支払いを保証してくれることになったのである.68年に,フリストは,息子と元患者のジャック・マッセイ(ケンタッキー・フライド・チキンの創立者の一人)と共に,現在米国最大の病院経営会社となっているホスピタル・コーポレーション・オブ・アメリカ(HCA)を設立した.設立してからわずか6か月で11の病院を傘下に入れ,現在では400近い病院を経営している.
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