連載 エッセイ――私が見つけた世界の「食」・4
NASIGORENG[南海の炒めご飯]
内木 美恵
1
1大森赤十字病院
pp.420
発行日 2008年5月10日
Published Date 2008/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101210
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- 文献概要
インドネシアのホテルには朝食が付く。メニューはNASIGORENG(ナシゴレン;インドネシア風炒めご飯),MIEGORENG(ミイゴレン),またはトーストに目玉焼かオムレツの3種類があり,これにフルーツとコーヒーまたは紅茶である。2004年末の津波から1年後に訪問したときには,ミイゴレンやフルーツはなかった。訪問を重ねるたびに充実していったが,ナシゴレンだけは変わらなかった。
日本でも今ではインドネシア料理はポピュラーになりつつあり,辛いものを食べたいときにはちょうどよい。しかし,本場インドネシアのナシゴレンの辛さは半端ではない。特に奥地に入れば入るほど辛い。私の訪問した場所はスマトラ島のアチェ地域,北東部に位置する。2005年に反政府軍が和平条約を結ぶまでは戦闘が激しく,アチェ人の多いところである。日本赤十字社は津波直後からこの地域で支援活動を行なっている。現地スタッフの1人が災害直後,南西部のバンダアチェに親戚を見舞いに行き飛行機で戻ってくるときに渡されたものは赤唐辛子の入った麻袋2~3袋であった。この地の人たちにとって,唐辛子は欠かせない香辛料なのである。だからというわけではないが,味は激辛だ。私は皿に盛られたナシゴレンをすべて食べきれたことがない。本当に口から火が出そうになるくらい辛い。一方うれしいのは,リーズナブルな値段であり,5000~9000ルピア(日本円で60~120円)であるため,ついついオーダーしてしまう。
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