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はじめに
神戸市立医療センター中央市民病院(旧神戸市立中央市民病院)は,1981(昭和56)年に現在の地に開設した。神戸医療圏における救命救急センターとして24時間365日,市民の健康と生命を守る基幹病院として重要な役割を担っている。
しかし,施設・設備面での経年劣化や老朽化が進み,医療技術の進歩に応じた最新の医療設備の導入や患者のプライバシーへの配慮など患者のニーズに対応することが困難となり,2011(平成23)年春の開院をめざして移転新築による整備を行なっている。
整備手法は官民のパートナーシップが発揮しやすく,将来の変化への対応も行ないやすいPFI(Private-Finance-Initiative)*1法にもとづいて進めている。事業方式はBTO(Build-Transfer-Operate)*2,事業期間は30年間,事業範囲は施設などの設計・整備・維持管理,物品・物流管理,医療行為以外の各種運営業務である。
筆者は,2005(平成17)年4月に神戸市立医療センター中央市民病院から転勤となり,この事業のプロジェクトの一員として,神戸市保健福祉局病院経営管理部の新中央市民病院整備室に勤務している。日々,医療を取り巻く環境の変化だけでなく,温暖化に象徴されるように地球規模での環境変化が生態系に影響を与え,新たな感染症が発生するかもしれない,疾病構造はどうなっていくのだろうかなどについて考えている。そしてこのような変化への対応が可能になるよう施設設計に意見を述べている。同時に,新病院で働く人々が困らないように,開院時から開院後,その先の30年後の姿(実際には不透明)をイメージし,管理運営について病院とSPC(Special-Purpose-Company)*3協力法人との調整を図りながら事業を進めている。
しかし,病院PFIについては,日本では先行事例が少なく,問題ばかりが表面化し,評価は決して良いとはいえない状況である。 病院PFIの成功要因の1つは,民間のノウハウを取り入れたすばらしい施設を活かす能力をもった人材,つまりマネジメントができる人材が存在することであると考えている。このような人材は,病院とSPCの双方に必要である。特に病院においては,限られたトップマネジャーだけでなく,多くの看護職に高い実践能力とマネジメントができることを期待している。
今回,新病院で看護職がプロフェッショナルとして活躍するために必要な人材育成について,これまでの体験を中心に考えを述べる。
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