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医療の最前線には,延命治療の開始や中止,終末期患者への病名・予後の告知といった医療倫理的問題が山積している.大学病院などに設置されている倫理委員会は,主にヒトを対象とした研究計画の倫理的問題の審査,つまり,Institutional Review Board(以下,IRB)としての機能が主たる業務である.しかし,病院,とくに一般病院においては,診療行為が主体であり,それに伴う倫理的問題点にタイムリーかつ的確な助言を与えられる機能,いわゆる病院内倫理委員会(Hospital Ethics Committee:HEC)としての機能が求められている1)が,これを実践している医療施設は少ない2,3).
医療法人財団慈生会野村病院(以下,当院)は,三鷹・武蔵野地区に117床の病床(うち35床は回復期リハビリ病床),訪問看護ステーション,地域包括支援センター,予防医学センターを有する中規模病院であり,地域における総合診療の実践を病院の目標と掲げ,近隣の高次医療機関と診療所を結ぶ存在となっている.また,緩和ケア病棟は有さないが,終末期患者,とくに,終末期においても治療を希望する患者に対して,一般病棟での緩和医療の提供に尽力している.2006年2月の日本医療機能評価機構再認定(version 5)の際に,倫理委員会を整備する必要性が生じたが,当院の実情を考慮した時,IRBとして機能するのは年間5~6件程度であろうと考えられた.一方,年間死亡患者数は120名前後で,そのほとんどが超高齢者および悪性疾患患者であった.このような背景のなか,HECとしての機能を充実させた倫理委員会を設立し4)約3年間が経緯したため,その経験をもとに,病院における倫理委員会の役割を考える.
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