連載 CURIOSITY SQUARE & CIRCLE[8]
―[伊澤紘生さん]―SQUARE ものごとの見方/CIRCLE 「競争の論理」と「競争の裏側の論理」で捉えること
堀 喜久子
1
1神奈川県看護協会
pp.627,700-701
発行日 2004年8月10日
Published Date 2004/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100535
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- 文献概要
京都大学4年生の時から40年以上,サルの観察を続けてきた伊澤紘生さんは,「人間がボスザルと呼ぶ存在は,実は悲しい雄ザルの姿なのです」と語る。
「人間がボスザルとして見てきた,背中をそり返し,尾を立てているのは,実はサルが大変緊張している姿。動物園のサル山や野猿公苑では,与えられる餌の量が限られ,しかもリンゴやバナナなどおいしいものはほんの少ししか与えられない。腕力の強い者だけが食べられるため,他のサルから絶えず狙われている。尾を立てている姿は,実は緊張しきっていることを表わしている。サルの雄は,3・4歳の思春期になると,それまで正面から抱き合っていた母親から離れ,群れからも離れる。だから,他のサルに出会うと緊張する。『マウンティング』と呼ばれる行動は,ボディコンタクト(身体接触)で,後ろから馬乗りになり,そのあと背後から毛繕いして友達になるという緊張解消の行動。自然のなかでは,小さなサルが大きなサルに出会うと,当然小さなサルのほうが緊張する。それを解消するために,小さなサルが大きいサルにマウンティングをする。『ボス』は人間がそう見ているだけで,餌付けされているサルの集団にも自然のサルのなかにも存在しない」
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