主張
公正な競争原理を持つ市場
I
pp.985
発行日 1997年11月1日
Published Date 1997/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902245
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保険制度を中心にしながらも,医療全般にわたる構造改革に関する議論が進行中である.医療は年金や介護とともに社会保障の中で重要な役割を果たしているが,それはいつの時代,どの社会においても,その必要性を認識されている.憲法第25条は国民の基本的人権の一環として,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障し,さらに社会保障に関しては国の社会的使命を謳っている.社会的保証とは,言い換えれば,国民が安心して生活を営むことを社会が保証することであり,加えてそのために所得再配分機能を国家の財政の範囲で保証することである.
医療は「自然科学としての医学を社会に適用すること」であり,社会科学の中に位置付けることが可能であると思われる.現代の社会科学は政治学,経済学,社会学といったアメリカ流の法則定立科学に帰着しているようであるが,普遍的な法則の定立を謳う社会科学も歴史的な偶然の産物にすぎないとする認識が主流のようである.要するに,事前に絶対的真理は存在せず,その時代,その社会の振れの幅の中で最も適正と思われる位置付けを見いだすことではないか.
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