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はじめに
本稿以降では,これまでの調査結果を敷衍するかたちで,看護界の特殊性という視点から,看護職におけるセカンドキャリア概念のもつ含意について検討する。
本稿では,前回までと同様,神奈川県ナースセンターが行なった調査の結果に基づき,セカンドキャリア看護職に対する需給間のギャップの存在を確認し,看護職に対してセカンドキャリアという言葉を一律に適用することの孕む問題を明らかにする。すなわち,(現場で働いている人間も含め)われわれが観念的にセカンドキャリアの有用性について考える場合と,管理者側がセカンドキャリアに対して実際的に期待する役割との間にズレはないか,という点を問うてみるわけである。
まず,雇用側のみるセカンドキャリアのイメージを年齢的にみると「60歳前後以上」(64.9%),「50歳以上」(23.5%)とする認識が全体の90%を占めており,全体社会の動向に合致したものとなっている。ただし施設側が,そういった年齢層の「ベテランナースの技能」を十二分に認め,それを現場で活かそうと考えているかといえば,そうでもない。たとえば,定年制の延長を検討している施設はわずか23.7%にとどまり,再雇用制度のある66.7%の施設のうち,再雇用後の就業形態で常勤を認めているのはわずか22.0%である。そして,セカンドキャリアに対する期待の高さもうかがえるものの(図1~4),それはセカンドキャリアに求められていることなのか,あるいは看護職全般に求められていることなのかが,はっきりしない。あくまで観念的なデータである。
したがって,図にみられるようなセカンドキャリアに対する期待はあくまで総体的かつ観念的なものであって,実際にセカンドキャリアを雇用するとなると,また話は違ってくるのではないだろうか。本連載第2回(本誌16巻5号p.398-402)で検討した際に,施設種別によるセカンドキャリア採用の積極性の違いは認められなかったように,規模,設置主体,立地などの施設の特性とセカンドキャリア採用の積極性との相関関係をみてみると,唯一,「看護職員の不足」のみ正の相関がみられた。つまり,ありていにいえば,セカンドキャリアといえども,慢性的な定員割れと近年の患者数の増加に伴う職員数の不足(図5)を埋める人頭としての要素が強いのである。とはいえ,おそらく施設種別によって求められるセカンドキャリアの条件は異なってくるだろう。さらに,実際にセカンドキャリアを雇用することで,その積極的な意義を発見することもあるだろう。
そこで,積極的にセカンドキャリアを雇用しようとしている場合に,施設種別1)ごとにどういった因子が強く働いているのかをみることで,この点について明らかにしてみたい。具体的には,「セカンドキャリアに対するイメージ」(図1),「セカンドキャリア採用時に重視すること」(図2),「セカンドキャリアに期待する能力・経験」(図3),「期待する人柄・資質」(図4)を独立変数として,最適尺度法による回帰分析によってセカンドキャリアの積極的雇用に影響を与えている因子を探り出していく2)。
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