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はじめに
少子高齢化に伴う労働力減少と,高齢者の自己実現なる社会的理念とが結びついたときに,概念としての「セカンドキャリア」が実体性を帯び始める。そして,キャリアブレイクまでに蓄積された経験,知識,技能を活用できる機会の創出が,社会的な課題とされる。
こうした枠組みに基づいた認識は,看護職にもそのまま横滑りしている。すなわち,高齢の「ベテランナース」が,自身のライフキャリア構築のなかで,自身の豊富なワークキャリアを社会に還元していく流れを創り出すことで,看護界全体の労働力減少もカバーできるという調和的図式である。
しかし,今回みるように,一般にセカンドキャリアと想定される60歳以上の看護求職者の実態は,こうした調和的図式に必ずしも収まるものではないし,本調査で対象とする50歳以上の求職者を一面的に「セカンドキャリア」としてとらえるのにも問題がある。さらに,60歳以上の求職者の自己認識には,50歳代以下の看護職従事者がセカンドキャリアに対して抱くイメージとは大きな乖離がある。そして,ここから浮かび上がってくる現実は,次回以降でのライフキャリアとしてのセカンドキャリアを考える際の一つの材料ともなるだろう。
本稿では,神奈川県ナースセンターに求職登録している40歳以上の602名を対象にして2004(平成16)年12月に行なわれた「セカンドキャリア人材活用のための看護職員の実態調査」のデータ(有効回答数217票,有効回収率36.0%)に即して(年齢層の内訳は,40歳代115票,50歳代71票,60歳以上30票であり,不明の1票は除外した),こうしたセカンドキャリアをめぐる虚実を浮かび上がらせていきたい。なお,本調査の遂行ならびに結果の取り扱いについては,書面にて調査対象者に説明することで倫理的配慮を図っていることをお断りしておく。
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