連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・2
夜のくらやみはファンタジーの世界―『アルフィとくらやみ』『くじらの歌ごえ』
柳田 邦男
1
1作家
pp.414-415
発行日 2005年5月10日
Published Date 2005/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100170
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夜9時の消灯時間が過ぎると,病棟は急にシーンとなってくる。特別に夜に入ってからでも患者に付き添いを認められた家族も,8時を過ぎると,そっと帰っていく。病室に残された患者にとっては,孤独な長い夜のはじまりだ。
消灯といっても,病室を真暗にするわけではない。廊下の明かりや常夜灯で,薄明るさは保たれている。それでも患者の心はひっそりと寂しくなる。ある看護師Sさんから,こんな話を聞いたことがある。自分の勤務する病院に,親しくしている叔母が入院した。叔母は,担当する病棟とは別の病棟に入っていたのだが,毎日勤務が終わると,その病棟に立ち寄って叔母を見舞った。
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