随想 明日を担う公衆衛生
たそがれ,くらやみ,夜明け
中村 美治
1
1健康文化会労災職業病公害研究所
pp.440
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203314
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公衆衛生のたそがれということがひそかにいわれはじめてから十余年になる。昨年末から今年の春にかけては,私の働いている東京北部でも,腸チフス,赤痢の集団発生が相ついでいる。また,すでにがまんできないほど大気汚染がひどくなっている町の真中に大きなごみ焼場をたてようとか,患者はベトナムから無検疫で運びこまれるから米軍野戦病院をたてようとか,さてはLPGの貯蔵所をつくろうだとか,たそがれがいよいよくらやみに移行しているといってよい状況がはっきりしてきた。
たそがれがくらやみになれば次は夜明けがくるから,これは手放しでなげくことでもないだろう。草木は眠り,百鬼夜行するうしみつ時をながびかせず,夜明けの到来をはやめるためにはどうすればよいのか,これが今日の課題であろう。
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