特集 拡がる看護研究の未来
看護研究の歩みと展開
現象学的看護研究の導入と新たな展開
村上 優子
1
,
西村 ユミ
1
1首都大学東京健康福祉学部看護学科
pp.530-535
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201695
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現象学と看護学の接点
「現象学(phenomenology)」という言葉は,かつて多くの看護師にとって耳慣れない,どのような字を書くのかもわからない(高橋,1985)ものであった。また,「現象学」という言葉自体が難しさを伴うこともあり,あえて使わないでいたこともあったようだ(早坂,1984)。しかし現在,看護学において現象学という用語は広く知られており,看護研究の一般的な質的研究方法にもなり,この方法を用いた多くの研究が報告されている。
「現象学」は,20世紀初頭にフッサール(Edmund Husserl, 1859〜1938)によって創始され,その後,ハイデガー(Martin Heidegger, 1889〜1976)やメルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty, 1908〜1961)等々に批判的に受け継がれてきた哲学である(榊原,2007)。批判的継承と多様な展開の結果,現象学は「事象そのものへ!」という根本精神こそは受け継ぎつつも,独特の展開を遂げてきた(榊原,2011)。日本において現象学が最初に紹介されたのは1911年,哲学者の西田幾多郎によると考えられている(高橋,1985;渡邉,渡邉,高橋,2004)。
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