増刊号特集 看護と哲学─共同がもたらす新たな知
インタビュー分析の言語学的基盤,個別者の学としての現象学
村上 靖彦
1
1大阪大学大学院人間科学研究科
キーワード:
現象学
,
言語学
,
質的研究
,
ナラティブ
Keyword:
現象学
,
言語学
,
質的研究
,
ナラティブ
pp.316-323
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201265
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1.個別者の学としての現象学
現象学 vs 既存の学
現象学的な質的研究においては,参与観察とともにインタビューの逐語録分析が重要な手段となる。この研究は1つひとつのインタビューを個別に細かく分析するため,多くのデータを用いる研究から見ると妥当性に欠けると思われることがあるようである。しかし,「個別の事例だから妥当性がない」ということではなく,個別のデータの分析が妥当性を手に入れるための方法がある。現象学的な質的研究は,個別の出来事に意味を与える方法論である。現象学は自然科学とは異なる学問的基盤に則っており,そのことが個別者の学を可能にする。この基盤のうちの一側面にすぎないが,本論ではインタビューの語りの個別性が,語り手の身体の組織化の個別性と対応すること,言語学の知見がこの語りの分析の妥当性を支えていることを示したい。
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