増刊号特集 看護と哲学─共同がもたらす新たな知
補い合うことと考えること─ある看護師へのインタビューの分析から
小林 道太郎
1
1大阪医科大学看護学部
キーワード:
共同実践
,
インタビュー分析
,
現象学
Keyword:
共同実践
,
インタビュー分析
,
現象学
pp.267-275
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201259
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はじめに
看護の臨床実践には,従来の哲学があまりテーマとして論じてこなかったいくつかの特徴が含まれている。それは,対人的・身体的なケアの行為であること,共同的な実践であること,専門的知識と経験の両方が有意味に働くことなどである。これらは必ずしも看護だけの特徴ではないが,看護の具体的な実践の中には,これらのこととも関連して,まだ語られていないことが多く含まれていると思われる。それらについて語るためには,実践の中から新たに言葉をつくることが必要となるだろう註1。既成の概念枠に頼らず,「事象そのもの」を注視することから記述を始めることは,現象学の基本的な方法的格律である註2。
看護実践に関する現象学的記述の1つの方法は,看護師にインタビューをしてそれを分析するというやり方である。本論では,インタビューの中で共同実践としての看護に必要なことについて話してくれたある看護師の語りを分析することから,そこに含まれるいくつかの特徴を取り出したい註3。このような実践の記述は,看護とは何かという問いに対する答えの一部であるとともに,哲学としての現象学にとっても,行為論あるいは人格を含む生活世界の具体的な解明の一部として重要な意味をもつ。本論は,インタビューの一部とその分析を示した後,その分析に含まれる方法的前提について簡単に述べ,最後に分析のまとめと考察を行なう。
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