焦点 看護学における「生活者」という視点─「生活」の諸相とその看護学的省察
慢性の病いと「生活者」,そして「生活」
訪問看護の領域における「生活者」と「生活」
岸田 利香
1
,
市橋 恵子
2
,
普照 早苗
3
1大阪大学大学院医学系研究科博士後期課程
2訪問看護ステーション堂山
3岐阜県立看護大学
キーワード:
生活者
,
生活
,
訪問看護
,
在宅看護
Keyword:
生活者
,
生活
,
訪問看護
,
在宅看護
pp.345-353
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100146
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はじめに
日本では,慢性疾患および医療的ケアを要する在宅療養者の増加とともに,入院期間の短縮化により,訪問看護の必要性は高まっている。訪問看護は地域や居宅で生活する人を対象とする。それゆえ,対象者を「生活者」と呼びたくなるところである。しかし,天野(1996,pp. 9-11)は「生活者」について,多くの人びとが使い勝手のよいこの言葉を安易に使うと批判した上で,あいまいなお守り言葉であるからこその,示唆に富んだ言葉として,その内実を改めて問い直してみる必要があるという主旨を,投げかけている。そこで本稿では,訪問看護の領域における「生活者」の概観とその意味を,文献をもとに検討する。また,「生活者」について考える上では,「生活」とはどのようなものかという設問が避けられない。よって,「生活」についても検討し,最後に,「生活」を支える訪問看護についての私見を加えた。
ここで,「訪問看護」と「在宅看護」の2つの言葉について整理しておく。杉本・眞舩(2001,p. 5)は,在宅看護は看護が行なわれる場を表し,訪問看護は手段を表している,すなわち在宅看護を実現させる手段として訪問看護があると定義している。この定義に則れば,両語それぞれに論述を展開するべきところである。しかし,医学中央雑誌のシソーラス検索において,「在宅看護」は「在宅介護支援サービス」と同義になっている。本稿では「訪問看護」の領域での検索結果を中心に扱い,「在宅看護」の領域でのものを補完的に扱う。
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