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はじめに
ビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)が発表されてから6年が経過した。インターネット上にはビタミンK補充に関する情報もあり,なかには育児中の母親に不安を与えるものも混在している。このため助産師1人ひとりが,ビタミンK欠乏性出血症の発症をなくすために,ビタミンK製剤の投与方法について再認識し,乳児をかかえた母親からの質問に対しても,専門職としてエビデンスに基づいた説明をして,母親を安心させることが求められる。
ビタミンKは,1929年にデンマークのHenrik Damにより発見された脂溶性ビタミンである。ドイツ語で血液凝固を意味するKoagulationの頭文字をとりビタミンKと命名された。
ビタミンKは,血液凝固因子を活性化し血液の凝固を促進する作用をもっている。このため,ビタミンKが欠乏するとビタミンK欠乏性出血症を発症することがある。特に新生児や乳児では不足しやすく,発症頻度が高かった。1981年の全国調査では,ビタミンK欠乏性出血症は全出生4000例に1例,母乳栄養児に限ると1700例に1例の頻度で発症していたが,新生児・乳児に対して,ビタミンK製剤を合計3回経口投与する予防法の普及とともに,1990年には1981年の10分の1にまで減少した1)。しかし,その後も出生直後のビタミンK製剤投与の失念により発症したケースや,通常の予防投与を受けたにもかかわらず発症したケースがみられた。
2011年に「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」が発表され,ビタミンK製剤を生後3か月まで毎週1回経口投与する予防法が追記された2)。ガイドラインの普及にともない本症の発症数は極めて低下したが,今後ビタミンK欠乏性出血症の発症をなくすためには,ビタミンKの補充を不足なく確実に行なう必要がある。そこで今回,現行のガイドラインが制定されるまでの経過を振り返り,乳児ビタミンK欠乏性出血症の発症ゼロを実現することを願う立場から考察を行なった。
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