助産婦事典
乳児ビタミンK欠乏性出血症と母乳哺育
吉岡 慶一郎
1
1国立大阪病院母子医療部
pp.568-572
発行日 1982年7月25日
Published Date 1982/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206053
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乳児期におけるビタミンK欠乏による凝固障害症として,古くより新生児出血症(新生児メレナ)がよく知られている。その発症機序として,肝の未熟,胎生期におけるビタミンKの貯蔵不足による凝固因子活性の低下があげられる。この疾患は生後数日間に発症し,哺乳開始によるビタミンK摂取率の増加,腸内細菌によるビタミンKの合成開始により,生後1週以後には見られなくなる。
これに対して1960年代より主として東南アジア地区において,新生児期をすぎた乳児にもビタミンK欠乏に基因すると思われる重篤な出血症が報告されてきており,わが国でもかなりの報告がある。とくにこの出血症は新生児メレナに比較して頭蓋内出血など重篤な症状がみられ,一見健康と思われる母乳栄養児に突発的に発症することから,小児医療にたずさわるものの注目を浴びている。
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