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患者の目線—医療関係者が患者・家族になってわかったこと
内木 美恵
1
1日本赤十字看護大学大学院
pp.671
発行日 2015年8月25日
Published Date 2015/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200273
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妊産婦に寄り添う時の助産師の目線は
本書を読み終えて,私のなかにはいくつかのフレーズが残った。「看護師は遠慮なく何でも聞いてくださいと言うが,患者はなかなか聞けない」「医療主導ではなく,患者と家族の希望や意思を尊重する」。これらは基礎教育や卒後教育で常に耳にしているフレーズばかりだ。しかし本書を読みながら,実際に実践できているのかという疑問が浮かんだ。そして同時に,私が助産師として産婦人科病棟で働いていた時のこと,自分が入院した時のことを思い出していた。
私が病院で助産師として働き始めたころは,妊婦や患者などを対象に「遠慮なく何でも聞いてください」というフレーズをよく使った。しかし,対象が本当に何でも聞ける雰囲気をつくり,何に困っているかを想像し,対象の表情からも問題を読み取ろうと努めていたかというと,必ずしもそうではなかった。本書にもあったが,治療の優先や,業務が増えて煩雑になることへの懸念,出産をしていない私が答えてもいいのかといった不安が頭をよぎり,口先だけでこのフレーズを使っていたこともあったと思う。加えて,経験が浅いことで対象の生活を察しようにも想像がつかず,個別性を考えた看護やアドバイスが難しかった。対象の住居構造や家族構成,過ごし方,仕事や趣味まで考えて説明したり,アドバイスしたりできるようになったのは,自分が病気を体験したり,さまざまな対象へのケアや妊産婦指導を経験したりしてからだった。
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