巻頭言
医療関係者の患者のために必要な睡眠
大井 元晴
1
1大阪回生病院睡眠医療センター
pp.5
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100007
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新幹線の運転手の居眠り運転により,睡眠時無呼吸症候群がマスコミに取り上げられ,知名度が急増し,患者さんの受診増となったが,どうやら一段落し,これからが睡眠呼吸障害の診療の正念場と思われる.睡眠呼吸障害は睡眠医療のなかで重要な部分であるとしても,睡眠時間の短くなりつつある社会においては一般的に睡眠不足の問題があり,居眠り運転による交通事故など社会的活動との関係も問題となる.したがって,睡眠に関する知識の普及,睡眠不足の防止に関する教育活動も重要と思われる.
今回の新幹線に関連した問題では,主に交通に関連する産業衛生上の問題として扱われ,国土交通省の通達などが出され,スクリーニングなどの産業衛生上の対策がとられつつある.この点に関して,直接医療界と関連づけられることがなかったが,睡眠医療先進国の米国では,勤務体制の違いはあるものの,医療事故と睡眠不足・過労の問題は以前より指摘され,研究も行われ,対策がとられつつある.1984年にニューヨークで午前3時30分ごろ,週80時間の勤務が終わりつつある研修医によって,同時に投与してはいけない薬物の投薬で患者が死亡した.患者の父が弁護士であり,事故再発の防止に奔走し,ニューヨーク州では研修医の勤務時間は週80時間が限度とされた.しかし,全米に普及したのは最近のことである.1995年,麻酔医が麻酔中に居眠りし,患者が死亡したと思われる例があり,また,ヨーロッパにおいても研修医の勤務時間の限度が定められ,週約60時間程度以下となっている.
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