連載 学生なら誰でも知っている 看護コトバのダイバーシティ・4
患者目線
木村 映里
pp.249
発行日 2017年4月25日
Published Date 2017/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200716
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「患者目線の医療」「患者目線での看護」と看護の教科書には書いてあり,私たちは学生のときに幾度となく「患者目線」という文言を目にしてきました。元々は,医療者があまりに優位で横柄だった過去の医療を自省しようと使われ始めた言葉だったと聞いたことがありますが,「患者様」という呼び方が議論を呼んだことや,「患者は客だぞ!」と怒鳴る患者が増えてしまったことなど,思わぬ影響も出て,難しい一面もあるようです。
私も学生のときには,「患者さんの目線で」と指導を受け,「きっとひとりで病室にいるのは寂しいだろうな」「私が不安そうな顔をしてたら不安になるだろうな」「いろんなことが時間で決められててしんどいだろうな」と,右も左もわからないなりに患者さんの気持ちを想像したものです。しかし卒後,臨床に入ってみると,人手も時間も足りない日々で家族関係すら把握できないこともあり,患者さんの目線になんてなれないじゃないかとひどく悔しい思いをしました。そんななか,1日でいちばん忙しいといわれる夜勤の朝の検温で,毎日のように看護師の駆け足を見ている患者さんたちが,「俺,今日調子良いから,熱だけ測ってくれればあとは昼間でいいよ!」「看護師さん来る前に体重測っておいたよ!」と先回りして看護師の負担を減らしてくださっていたとき,私たちが患者さんを看ている以上に患者さんは私たちを見ているのだということ,そして,看護師が患者さんに何を提供できるのか考えるのと同じように,患者さんは受け身の存在ではなく,治療のなかでも看護師に対して何ができるのかを考えてくださっているのだと思いました。
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