連載 災害時の母子保健 妊産婦を守る助産師の役割・9
東日本大震災時の周産期アウトカム
吉田 穂波
1
1国立保健医療科学院生涯健康研究部
pp.878-883
発行日 2013年10月25日
Published Date 2013/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102604
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ストレスにさらされた妊産婦さんは?
今回,大震災の影響で妊産婦さんの経過やお産,生まれた赤ちゃんにはどのような影響があったのでしょうか。
現在まで,海外では妊婦は強いストレスのかかる環境下において,異常症状や胎児に対する強い不安を呈することが多いということ,非常時には5歳未満の子どもの死亡率や罹患率が他の年齢層に比べて通常時の20倍以上になること,災害や紛争が起こったとき,妊産婦の致死率は西欧諸国の200倍になること1),新生児死亡率,低出生体重児の率も平時の2倍以上になること2),そしてその原因は,災害や紛争のストレスによるものより,むしろ産婦人科的医療へのアクセスの悪さによるものということがわかっています。現に,もともと産婦人科的医療資源が乏しい国では,避難所で産婦人科的支援を行なうことで平常時よりも低出生体重児や早産の率が下がる例が散見されており3),乳児は被災地において特にリスク下に置かれること,災害時には母子にとって安心して過ごせる場所と,安全で十分な食糧と飲料水を確保する必要があるということが知られてきました。
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