連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・10
胎児の成育限界をめぐる生命倫理(Ⅱ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.872-877
発行日 2013年10月25日
Published Date 2013/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102603
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成育限界(viability limit)とは
現在のWHOの国際疾病分類(ICD-10)における“live birth(生産)”の定義は,「在胎週数にかかわらず出生時に生命徴候が認められる場合:any evidence of life at birth, regardless of gestational age」とされている。生命徴候とは心拍・呼吸・体の動きなどであり,在胎20週以下の流産児でも短い時間ながら認められうる。
この定義を臨床に適応して,出生後数分生きた児を“live birth(生産)”として扱うならば,法的に出産届を出して名前を付けて戸籍に載せると同時に死亡届も出さなければならない。母体保護法の「胎児が母体外で生命を保続することができない時期」の「生命の保続」の意味が曖昧であるが,WHOの定義に類似した意味合いと考えれば,生きる期間や生命の質に無関係に,単に母体外で生きることのできる限界の「生存限界」といえよう。
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