特集 命をめぐる「話し合い」のガイドライン
重篤な疾患を持つ児への治療をめぐる諸外国での議論―イギリスでの議論を中心として
横野 恵
1
1早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程
pp.497-500
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100749
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はじめに
英国の小児科小児保健勅許学会(Royal College of Paediatrics and Child Health:RCPCH)*1は,1997年9月に『小児における生命維持治療の差し控えまたは中止:実務のための枠組み』と題する文書を公表した*2。この文書は,RCPCH倫理諮問委員会が小児医療にかかわる諸専門職,患者,患者家族,倫理学者,法律家などの助言を得ながら議論を重ね,約2年の歳月をかけて作成されたものである。小児患者全般を対象として生命維持治療の差し控えまたは中止を論じたものではあるが,現在のところ英国には新生児領域のみを対象としたこの種の文書はなく,この文書が新生児医療に及ぼす影響は小さくないと思われる。
本稿では同文書を軸に,最近のイギリス(イングランドおよびウェールズ)における新生児・小児の生命維持治療の差し控えまたは中止をめぐる状況を紹介する。なお,この文書はしばしば「ガイドライン」として言及されているようであり*3,本稿でも以下,「ガイドライン」という。
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