天地人
議論の真贋
越
pp.551
発行日 1982年3月10日
Published Date 1982/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217691
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国の内外を間わず同じであると思うのだが,議論をして正当に黒白が明らかになることは少ないようである,個人の間でも厚かましい独善的な人間の方が外見上は尤もらしいことを並べたてて議論に勝つのが普通で,正当の主張をしているような人間は,内心で決して納得できないと呟きながらバカバカしくなって黙してしまうことが多い.この場合,彼がいかに相手を憐れんだり,蔑んだりしても負けは負けである.
政治の駆けひきも同じで,歴史的に有名なのは,維新の際の会津藩で,どこの藩にも負けぬ忠誠心をもちながら,岩倉という怪物政治家の弁口と策略,そして薩摩藩の巧みな裏工作などに負けて,永く賊の汚名に甘んじなければならなかった,現在でも政治家の厚顔無恥を攻撃してみても,そうした政治家でなければ今の世の中を動かすことが出来ないのも事実である.また北方領土は返還すべきと叫んでみても,巨大な国力をバックにしたゴリ押しの論理の前には犬の遠吠えと同じく無力である.
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