連載 訪問看護 時事刻々
今月の話題 死をめぐる議論
石田 昌宏
pp.936
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100355
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今年春発覚した,富山県射水市の病院で外科部長が末期がん患者の人工呼吸器を取り外した問題は,その後大きな議論を呼んだ。日本集中治療医学会の内部調査では,集中治療室(ICU)の医師の90%が,回復の見込みがない患者の延命措置について,中止も含め積極的に行なわなかった経験のあることが明らかになった。
このアンケートは今年2月に,大規模な医療機関でICU責任者などを務め学会認定医の研修に携わる指導的な医師75人を対象に実施され,60人から回答を得た。うち,90%にあたる54人が「延命措置を控えたことがある」と答え,その内容は,血圧が急に低下しても昇圧剤を使わないといった「現状維持」が39%,投薬量などを減らす「減量治療」が28%,「すべて中止」は4%だった。措置を控えた理由は,「医師の治療上の判断」(55%)に基づく例が「家族の希望」(45%)より多かった。人工呼吸器の取り外しといった目に見える行為こそ少ないが,徐々に処置を減らしていく,目に見えにくい時間をかけた方法はかなり行なわれているようだ。
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