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オランダ人の挨拶の仕方
頬に3回キッス
オランダで見た挨拶の場面,風景は私にとってかなり新奇でした。なぜかというと挨拶の仕方が特異と感じたからです。オランダ人はお互いに抱き合ってに3回キッスを交わします。私はこの挨拶の仕方の場面を見て,「ちょっと,アー不潔」という否定的な気持を持ちました。しかし,それは後々になってからとを軽く触れるというやり方を誤解していたためだと分かりました。というのも私はてっきりオランダ人は唇とを触れ合わせていると勘違いしていたからです。3回キッスのシーンを初めて見た時,そう思いこんでしまったのです。そしてまた,オランダ人は誰もがこの挨拶の仕方であると考えたからでした。私が「えーっ,不潔!」と嫌悪感を持ってしまったのはそのためです。しかしこれは全く私の早とちりで,その場の状況をよく見ずに勝手に自己解釈をしていた自分に気がつきました。自分の国の挨拶文化を肯定し他者の文化を否定するといった文化的自己認識の欠如の最たる例であったといえます。
頬に3回キッスをするという挨拶の仕方はいつ頃から行なわれるようになったのでしょうか?
一説には1980年以降,オランダ人が休暇を使って他国に旅行するようになってからのことだそうです。オランダはヨーロッパ大陸のほぼ中心部に位置し,地続きのスペイン,フランス,ドイツ,イタリアなどの国々には容易に出かけて行くことができます。それで彼らは旅行先で見たり体験したりした挨拶の仕方を,真似するようになり,自然に自国に持ち込んだといいます。つまり,自分自身の身体で体験した「挨拶」が,人々が行き来する日常生活の中で自然に伝播していき,いつしか習慣化するといった現象ではないかと思います。
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