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●私の“カルチャー・ショック”体験
私は,慢性疾患をもつ子どもが学校生活をおくるためのサポートについて考えています。今回,アメリカでの子どもと家族へのサポートの実際を学び,それを手掛かりにして日本で研究を進めてみたいと考えていました。ところがです。例えば,スクールナースについて文献を調べたり,いろいろな方の話を聞いていると,スクールナースが複数名いる学校があり(これは子どもにとっては大変手厚いといえます),一方,1人のスクールナースが4~5校を受け持っていたり,スクールナースがいない学校もありました(これでは子どもへのサポートは難しくなります)。このように1つ例をみてもさまざまな状況があり,一概に,「アメリカではこうです」「シカゴではこうだ」と言えないということがわかってきて,“一体どれが本当なのか?”と戸惑い,混乱してしまいました。長年アメリカで暮らしている人にとっては当然なことが,私にとっては大きな戸惑いでした。シカゴの人口構成は,白人(コケイジアン)42%,AA(アフリカン・アメリカン)37%,その他(アジアンアメリカン含む)21%です。また,ヒスパニック系は26%です(2000年国勢調査)。ちなみに日本に居住している外国人は約155万人で,その占める割合は約1.2%です(2004年)。それに加えて,現在,経済危機の影響でアメリカの失業率は9.5%あり,イリノイ州では,10.3%,シカゴ中心部は,10.6%です(09年1月)。慢性疾患をもつ子どもをサポートするということは,そのようなさまざま背景をもつ子どもと家族をサポートするということを意味します。私たちはまずそれぞれの子どもと家族の住む地域の背景(とその状況)と同時に,個人的な背景をよく理解しておくことが必要であり,それらさまざまな状況に応じてサポートすることが,実際に最も求められているのだと私なりに理解できたのです。日本では,その「均一的」な社会を前提に物事を考えがちですが,アメリカではまったく違います。アメリカに長年在住されている(日本の)方が,久しぶりに日本に来て,「奇異」な印象を抱かれるのは,アメリカ社会が日頃の生活の基準となっていることからくる,日本社会との「違い」に違和感を感じるからでしょう。今回の私の体験は,異文化の中に身を置いて研究をするうえで必要な,最初の“カルチャー・ショック”というべきものでした。
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